3.人材紹介会社と求人者間でのトラブルについて

3.人材紹介会社と求人者間でのトラブルについて
はじめに

この記事は、「医療職の人材紹介会社の闇」をテーマにしたシリーズの3つ目の記事「3.人材紹介会社と求人者間でのトラブルについて」です。

最初から読み進めることをおすすめします。

 

人材紹介会社と求人者間でのよくあるトラブルとしては、「手数料」「早期離職」「返戻金」に関する事です。

この問題がありながらも、人材紹介会社を頼らざる得ないのは、募集をかけてもなかなか応募が来ないからです。

 

この応募が来ない理由も、人材紹介会社の影響を受けている可能性があるので、ここについても解説しますが、まずは、よくあるトラブルをみていきます。

 

採用は雇用契約を結べば完了ではない!

「斡旋」は雇用契約を結べば完了ですが、「採用」は雇用契約を結べば完了ではありません。

そこからスタートです。

数年ほど勤続してはじめて、「あと時の採用判断は正しかった」となるものです。

 

人材会社を使った採用は早期離職率が高い

人材会社を使用したトラブルとして多いのが「早期離職問題」です。

「医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査集計結果(概要)」によると、「人材紹介会社経由で採用したあと、すぐに辞めてしまった」と回答した医療機関が3割にものぼりました。

3〜4人採用したら1人はすぐに辞めるという計算です。

 

この数字が、多いのか少ないのか、と気になると思いますので、厚生労働省の調査データを確認してみましょう。

引用:医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査集計結果(概要)
厚生労働省職業安定局需給調整事業課
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000579094.pdf

全ての医療職で、人材紹介会社経由の転職者(左側)の早期離職率が圧倒的に高い状況です。

2倍程度の開きがあります。

 

返戻金があるから大丈夫?そんな事ないです!

早期離職の時は返戻金があるとされていますが、1ヶ月以内が90%、3ヶ月で50%程度、6ヶ月で10%程度など、段階的に返戻金が減額されるので、早期離職をされると費用がかかります。

また、6ヶ月を過ぎて退職してしまうと、返戻金はありません。

 

他人事で見た時、「返戻金が日数に応じて減額されるのは仕方がない事でしょ」となりがちですが、現場の意見は全く違います。

最初の数ヶ月は、仕事を教えたり、指導係をつけたり、余計な業務が一つ増えます。採用した人が一人前になるまでは逆に足手まといだったりします。

時間をかけて教えていた人が急に辞めるとなると、現場に混乱が生じたり、士気が下がったり、最悪のケースでは連鎖的に退職者を出す可能性もあります。

全額返戻であったとしても、目み見えにくい多くのコストがかかっています。正直、早期離職は損失でしかありません。

 

「成果報酬はコスパが良い」は嘘

各社、人材会社は決まって「採用できなければ費用ゼロなのでコスパが良い」なんて謳っていますが、早期離職でもされたら莫大な損害です。

で、この早期離職の確率は圧倒的に人材紹介会社経由が高いという結果が出ているわけです。

 

それはそうです。

求職者の希望に応える事なく、強引な面談スケジュール調整を組み、医療業界についての知識がない人間がマッチングさせています。

入職後に「聞いていた話と違う」となり、離職します。

 

医療業界について無知の転職エージェントによるノルマ達成を目指したマッチングサービスなので、ミスマッチが起きやすいのは簡単に想像がつきます。

 

「転職エージェントは、採用した時のみの支払いなのでコスパが良い」なんていうのは幻想です。

3〜4人に1人は早期離職します。

たまたま、上手くいくケースもありますが、平均的に考えると、最もリスクが高いのが人材会社経由の採用です。

 

なぜ、それでも人材会社を使うのか

民間職業紹介事業者を利用する理由は、「人材を確保できない現状」があるからです。

 

単に現場の人手不足というケースもあれば、診療点数を考慮した時に、看護師が何名以上必要だとか、療法士が何名以上必要という施設基準をクリアするためのケースもあります。

特に後者の場合は、人手不足をバイトで補ったり、1人あたりのマンパワーで解決する事はできません。

 

看護師が1人足りない事により基準をクリアできず、診療点数が下がる(つまり収益が下がる)となると、多少の費用がかかっても、どうにか看護師を補充しようと考えます。

 

ハローワークなどに掲載しても応募がなければ、もう人材会社に頼るしかないわけです。

 

人材紹介会社を使ってしまった理由

アンケート調査では、以下のような回答となっています。

  • ハローワークやナースセンターなど他の採用経路では、人材が確保できなかったため(71.1 %)
  • 確実に求職者を紹介してもらえるため(40%)
  • 迅速に求職者を確保することができる(採用に至るまでのスピード)(38.4%)
  • 多くの求職者からの応募が期待できる(26.2%)
  • 民間職業紹介事業者からの営業活動があったため(26.2%)

 

反対に、公共職業安定所やナースセンターなど無料の機関を利用しない理由としては、「なかなか求職者を紹介してもらえないため(67.9%)」が圧倒的に多いです。

 

これが、多額の採用コストがかかったとしても人材会社を使ってしまう理由です。

 

ハローワークに掲載すると人材紹介会社に人員不足がバレて営業がきます

依頼する事はないから無関係と思う人もいると思いますが、

依頼をしなくても、ハローワークやindeedなどに求人掲載すると、人材紹介会社に人員不足がバレて営業がきます。

 

人材紹介会社は、ハローワークやindeedの無料掲載求人を逐一チェックして、求人を出しているところを標的にします。

そして、掲載されている求人情報をコピーして自サイトで公開します。

 

人材会社経由の採用から抜け出せない「本当の闇」

GoogleやYahooなどは、求人に特化してる人材会社の求人ページを上位表示させる事が多々あります。

「施設名 求人」などと検索すると、本来であれば公式ホームページを最初に表示させるべきですが、人材紹介会社のページが出てしまいます。

検索結果が汚染されている状態です。

 

「自分の施設名 (スペース) 求人」で検索して、転職サイトが出てきたら、これが医療系人材紹介会社に、検索結果を汚染されている状態です。

 

求職者にとって、どのページが公式の情報かなんて話は気にしないので、人材会社のページへアクセスします。

すると、そのページからお問い合わせできるかのような案内があり、個人情報の登録を促されます。

 

人材会社は、問い合わせが入ったタイミングで「紹介したいおすすめの人材がいます!」なんて施設側に営業をかけるわけです。

 

本来は、無料でつながっていたはずの応募者が、人材会社の登録者として紹介される流れに持っていかれています。

 

人材紹介会社は、インターネットを活用したWEBマーケティングの専門家チームを抱えていたりするので、個人のクリニックが太刀打ちできない力技でインターネットの検索結果を汚染してきます。

ここが、人材会社経由の採用から抜け出せない「本当の闇」だと思っています。

 

でも、多くの採用担当者はここに気づきません。

応募が来なくて困っているタイミングで「紹介したい人がいます!」と言われると、一度会ってみようかな、、、となりますよね?

 

これが、人材紹介会社の営業手法の一つです。

それで、契約してしまったケースは多々あるはずです。

非常に上手いやり口です。

 

 

待ったなしの状況を作らない事が大切

人員不足でもう待ったなしの状況で、「迅速に人材を確保したい」となった時は、現状、人材紹介会社に紹介してもらう以上の手立てはありません。

 

つまり、人材会社の採用コストを改善したいなら、待ったなしの状況にならないようにする事です。

 

常に求人に関する問い合わせを受付ける

例えば、ホームページ上では、常に「求人に関するお問い合わせ」という問い合わせフォームを用意しておいて、専門職でかつ興味がある人のリストをとれる状態を整えます。

求人募集をしていない時でも、希望者とコンタクトをとれるようにしておき、問い合わせが入った際は、今後一緒にお仕事をする可能性がある人として、丁寧に対応します。

 

ただの問い合わせではなく、応募が来た場合は、「今すぐの採用はないが、募集する際は優先的にお声かけさせて頂いて良いでしょうか?」などと返信しましょう。

お断りする事になった場合も、採用 or 不採用 の単純な二択ではなく、いつか一緒に働いてもらう可能性を考慮して丁寧に返信をします。

 

病院の多くは、公式HPの求人ページを開くと「現在は募集しておりません。」という一文のみを掲載しています。

これでは、リストを集めることができないので非常に勿体無いです。

 

直接のやりとりが可能な掲載サイトを使うこと

また、公式サイト以外で募集する場合は、仲介者を介さない直接のやりとりが可能な掲載サイトのみを利用してください。

直接やりとりできないタイプの申込みフォームにはメリットが一切ありません。

 

「直接やりとりできない」というのは、転職サイトのように、担当者を介してやりとりをするケースです。

彼らは、「すべて代行するので、採用担当者の手間を省きます!」とか良いことを言いますが、これを良いサービスと感じてしまう人は、完全な情報弱者で、負のスパイラルから抜け出せません。

 

新しい求人サイトなどを使用する際は、カスタマーサポートで、応募に至る前の問い合わせへの返信方法について確認してください。

 

欠員が出た時にお声かけできる人がいるか?

実際に人員を補充しなければいけないタイミングになった時に、過去にお問い合わせがあったリストに対して、

「欠員が出るので緊急募集します。過去にお問い合わせがあった人を優先に案内を送っています!まだ興味があれば、ぜひご連絡ください!」

というメールを送る事ができます。

 

上手くいけば、即日でご連絡があるかもしれません。

また、もしリストにある方々が既に別の職場に転職していた場合でも、専門職の繋がりで他の方に話を回してもらえる可能性もあります。

 

欠員が出た時に慌てて求人を出すだけでなく、常に「求人に関するお問い合わせ窓口」を設けておき、欠員が出た時にお声かけできる人達のリストを集めておく事が大切になります。

(これらの対策やノウハウについては、別のシリーズで詳しく解説します。)

 

人材が欲しいタイミングでアプローチできる対象がいる事で、無駄に人材会社に頼る必要がなくなります。

この対策には多少の手間と時間がかかりますが、これが耐えられないなら人材会社に依存するしかありません。

 

 

人材紹介会社を使う際に気を付けるべき事

有名な人材紹介会社でなければ、「職業紹介事業の許可」を取っているか必ず確認してください。

 

そして、過去の取引実績を確認しましょう。具体的な施設名を聞いて、可能であれば直接「評判」を確認します。

 

また、紹介した求職者の定着率は必須です。

早期離職が起きた人数など、具体的な説明を求めて、答え方がしどろもどろするようなら怪しいです。

 

求人申込み~就職までのプロセスや平均的な期間も重要です。

転職エージェントの最大の強みは、「迅速さ」です。長期的に待たされるなら、そもそも使う意味がありません。

 

紹介手数料については、成果報酬システムの説明ではなく、具体的な金額、支払いのタイミング、支払い方法まで明確にしましょう。

 

そして、一番肝心な「早期離職の際の紹介手数料の返戻ルール」です。

日数を経過するごとに半減するような返戻ルールでは保証になっていません。

20~30%の確率で早期離職が起きていることを思い出し、返戻ルールには厳しく突っ込んでいくべきです。

 

最後は、繰り返しになりますが、何より大切なことは、人材紹介会社を頼らざる得ない状況に陥っていることに気づき対策すること。

つまり、待ったなしの状況を作らない事が大切です。

 

「3.人材紹介会社と求人者間でのトラブルについて」のまとめ

人材紹介会社と求人者間でのトラブルについて説明しました。

根本にあるのは、人材紹介会社のビジネスモデルだと考えています。

 

「成果報酬型はリスクがない採用方法」という説明は全くの嘘です。

データも出ています。

もし、人材紹介会社経由で採用するなら、そのリスクを十分に理解しておく必要があります。

 

最後に、「4.医療系の人材紹介のニーズと本来あるべき姿」について考えていきます。

 

 

はじめに:医療職の人材紹介会社の闇・問題点